「んじゃあ、いきまーす」
「はい」
吉野くんの合図にあわせて、劇は再会された。
「うわぁ~ん、白雪姫ぇ~。白雪姫が死んじゃったよ~」
劇は、床に倒れる白雪姫を七人のこびとが発見するシーンから。
手作りの棺桶の中に運ばれた私は、そっと目をつむる。
大丈夫、何も緊張することはないよ。
これは劇なんだから。
……そして、そこに王子様が現れる。
「おぉ、何と美しい」
落合くんの演技が始まった。
いつも完璧に台詞を出す落合くんは、本物の王子様だと言っても過言でない程の素晴らしい演技力。
一方そんな彼とは正反対な演技力である私は、その声が聞こえないくらい、極度な緊張状態に陥っている。



