「じゃあ、白雪姫が林檎売りに化けた王妃に出会うところから!」
吉野くんは台本を確認すると、淡々と指示を出す。
先ずは、台本を一度読んでみてからということになった。
……緊張するな……。
何回かやってきたとは言え、大きな声で……しかも役を演じるなんて、人前が苦手な私には酷なことだ。
「ではいいですかー?」
「はい!」
この返事は始まりの合図だった。
いつもよりも少し多くの酸素を取り込み、私は自分に“頑張るんだ”と言い聞かせた。
「お嬢さん、お一ついかが?」
「まあ、美味しそうな林檎。いただきますわ」
「はい、ではどうぞ」
「おばあさん、ありがとう」



