転校生は憧れの人




「そうそう。こんなこともあろうかと、実はくじ引きセットを作って持ってきたんだ。これに役名書けば使えねぇか?」



城崎くんは自信ありげな顔をすると、何やら紙が入った袋のようなものを取り出してみせた。



「おまっ……すげーな」



半ば苦笑いの吉野くん。城崎くんからそれを受け取ると、井原さんと協力して紙に役を書いていく。



「じゃあ、左の列の人から順番に引いていって――」



くじが完成し、そう呼びかけられた瞬間だった。



――キーンコーンカーンコーン。



チャイムが授業の終わりを告げる。



「くそ、時間か……。えっと、放課後までに全員引いておいてください」



わぁ……何があたるんだろう。緊張しちゃうなぁ。


こびと役とか楽しそうかも。


あ、でも私、演技なんてしたことないしやっぱり……。


不安とほんの少しの期待を抱いて、私はそっとくじに手を伸ばした。