「……アンタ、誰?」



……へ?


ハスキーな声が、私の脳内を巡回する。


変わらない、大きな瞳にじっと見つめられ、漸く理解する。


う、嘘ーー!?


もしかして私、忘れられてる?



「お前、何言っとんねん」


「そうよ。あなたと小学生まで一緒だった一ノ瀬な――」


「あ、梓ちゃん、滝川くん、いいの。もう、行こ」



必死に説明しようとしてくれた梓ちゃんと滝川くんには悪いけど、今は彼から離れておきたかった。


悲しいけど、涙は出なくて。


ただ、心の奥がぽっかりいてしまったような、そんな感じがする。


羞恥、喪失、空虚、無念、悲しみ。様々な感情が入り混じった私は、そっと溜め息をついた。