「驚いたよ? でも、なんか納得しちゃって」
好きな人を追いかけて転校。まさか、そんな漫画みたいな話が本当にあるなんて、衝撃的なことだ。
でも、弥生ちゃんはそれだけ憐くんを想っているんだろう。
「ふーん。……にしても、かなりの危険人物が現れちゃったね」
「き、危険人物……?」
理解をし損ねた私は、その言葉の意味を聞き返す。
「長嶋弥生。あれは要注意だね。あの子、完全に憐くんのこと狙ってるじゃん」
「うぅ、そうだよね」
「なずな、このままじゃ危ないよ」
その言葉に、私の心臓はドクンと音を立てる。
この恋が叶いたいわけではない。私はただ、じっと彼の後ろ姿を眺めているだけで幸せだから。
……そう思っていた筈なのに。
ドクン。
この胸のざわめきは何なんだろう。
暗い空のせい? 雨のせい?
心がキュッと掴まれたように、苦しくなった。



