「ねぇ、なずな」
「何?」
席に着くと、梓ちゃんは何やら真面目な顔をして私を呼んだ。
「さっきの人、長嶋弥生っていうんだよね」
「そうだけど……?」
そうだけど、何なんだろう。
「少し前に聞いたことなんだけど。その話によると、わざわざこの高校に憐くん追っかけて転校してきた女がいるみたいなんだよね」
「えぇ!?」
「……で、その女の名前が何と“長嶋弥生”っていうんだよ」
「弥生ちゃんが!? ……そっか」
「そっかって。え、もっと驚かないの!?」
驚きはかなりあった。
だけど、それ以上にすっきりした気分になっていた。
さっき私が引っかかっていたこと。
それが、梓ちゃんの話で全て解けたからなのかもしれない。
同じ小学校に通ってた弥生ちゃんがいることを今日まで知らなかった、なんておかしいことだもん。
だけど、転校してきた。そう言われると、しっくりくるんだ。



