「一ノ瀬」 その時、突然名前を呼ばれた私は、驚いたまま硬直する。 「これ、顧問から預かったんだけど」 声の主である憐くんは私に近付き、ある紙を差し出した。 “サッカーの極意”? それは、どうやら部活の資料のようで、サッカーについて書かれたプリントが束になっている。 「一ノ瀬に渡せって」 「……そうなんだ。憐くん、ありが――」 「憐、この子誰なのー?」 私の声は、一瞬にしてかき消された。