発車いたします、と車内アナウンスが流れた。


「…って、こんなに急ぐ必要もなかったね」

「確かに」



思わず笑い合った。

啓ちゃんとはあんまり電車に乗らないから、すごく新鮮な感じがする。



車内は、春休みだからか、かなり混んでいて、あたし達はドアの所にへばりつくような形になった。





…あれ。

あら?あららら?


ちょっとこの体勢、結構ヤバくない?



あたしはドアにベタっと背中を合わせ、啓ちゃんがあたしを覆うようにして前に立ち、あたしの顔のすぐ横に手をついている。



うきゃー!

急に、心臓が…。



いや、これはさっき走ったから?

いや、違うって!だって、だって。




あた、あたし、啓ちゃんの影に…啓ちゃんの……。




「…美園、キツくない?だいじょぶ?」

「だ、だ、だいどぶ!」



あ、さっきの啓ちゃんみたいになっちゃった(泣)

啓ちゃんは、きょとんとしてから、



「あと2駅ガマン」と言って笑った。



男らしさと可愛さのギャップに、胸キュン。

そしてその自覚がない啓ちゃん、何か、もう、あっぱれ(?)です…。