「アヤノっ!!!」
「………母さん、久しぶり。」
彼女の声を聞いたのは二日ぶりだった。
体力を消耗したくないのか、大体の返事を首だけでしようとする。だから声も聞いてなかった。
「……アヤノ、なの?」
「母さん、痩せたね……。あたしのせいだよね……。」
「あんただって…痩せたし…寝てないの?」
困ったように笑う彼女は、何と答えればいいのか分からない風だった。
「シンヤくんの親御さんも、来るわ。話、聞かせてくれるの?」
「………ごめん。」
「アヤノ…」
「……話、出来ないから。」
「どうして?」
「あたしとシンヤだけの、秘密なの。」
「……あんたはっ!」
「お母さん!!」
僕同様、女の子の隣で会話の行方を追っていた春海さんが手をあげそうになった母親を止めた。
「……本当に、あんたがやったの?……シンヤくんを……」
「……そう。」
「どうして……」
ぽろぽろと、母親であるその人は泣いた。
自分の娘が、人を。それも親とも面識があったらしい恋人を殺したと言い出したなんて。
誰だって、信じたくないだろう。



