「名前は?」
「灰崎乃野です。灰と書いてカイ、と読みます。乃と書いてアヤと読みます。」
「「………」」
参ったな。
これじゃあ、被害者の彼女とまったく同じ名前だ。
「……両親は?」
「一ヶ月前に私が家を出て以来会ってません。」
「神田、とりあえずこの子の両親に連絡取るように計らえ。」
「はい。」
部屋の隅にある電話。
本部に彼女の両親とコンタクトを取れるように依頼した。
「……で、だな。なんで一ヶ月も逃げてた?」
「………。」
「言えねえのか?」
「……。」
「……じゃあ。動機は?仮にも、付き合ってたんだろう?」
「仮ではありません。」
「ああ、悪い。じゃあ無理矢理付き合わされてた訳でもねえんだな?」
「はい。」
春海さんがいてくれて良かった…
僕ならこんな子は苦手だ。
会話を繋げることを諦めてしまう。
「捕まえないんですか?」
「……証拠がねえからな。」
「なんの?」
「お前が殺した証拠がねえ。指紋もなければ血痕、髪の毛、個人を断定出来る証拠があの部屋にはなかった。それに、お前が被害者の交際相手だって証拠もない。」
「……」
「だいたい、捕まってどうすんだ?」
「……死刑にでも、してください。」
「あ゙?」
なんだ、って?



