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「とりあえず、捕まえてくれますか。」
最初の印象は、具合が悪そうだな、と。
酷く濃い目の下の隈は主張が強すぎる。
悲痛に叫ぶ友達らしい女の子との別れも、終始薄い笑みを浮かべたままだった。
……こんな仕事をしていれば色んな人を見るけれど、取り繕った様子もなく。自然にこんなに落ち着いてここ――警察署に来た人は始めてだ。
しかも、捕まえくれと言って。
「おい神田、補導か?時間が早過ぎるだろ…」
「いえ、あの……」
補導に見えるよな…
どう見たってただの女の子だ。
「話を聞こうと思いまして……」
「お前な…そんな暇はねえだろ?ただでさえ、一ヶ月も前の自殺を蒸し返されてこっちはカッカしてんのに…」
「それが…」
「その、犯人。あたしです。」
「……はあ?」
「捕まえて、くれますよね?」
「……神田、」
「ハイ……」
「俺もいこう、一応…な。」
そう言って大先輩の春海さんは歩きだした。



