手を伸ばして想を呼びとめようとすると、 「お前はいいから先に帰ってろ」 そう言われてしまった。 「ち、違うの、違うんだよ」 これは“罠”かもしれないんだよ、と叫びたかったけど 出ていく間際の荒川さんのあたしに向けた笑顔で気付いた後で。 あたしの声は教室に静かに響いただけだった。