少女は偽りの恋





「知らない。」
と言い、まず首を振ったのは昌巳だった。

ツグミも勿論知らなかった。


「小さい教授様だ。」
と戯けたように呟いたのは、壬生藜だった。

「ね?
似てるでしょう、春夏秋冬教授に。」
昌巳は同意を求めるように言う。

その問いに、藜は笑い声を上げた。

「そっくりだね、教授に。
もっとも、喋り方だけだけど。」


「どんな教授なの?」
ツグミは好奇心に駆られ思わず尋ねる。

藜は一瞬彼女を見やり、目線を天井に上げた。
物を考えるような仕草だ。

しかし答えたのは、昌巳だった。

「立派な翁だよ。」

「老獪な翁だね。」

昌巳は、「そんな事ないだろ」と藜の一言を笑い飛ばした。


「それじゃあ、その狡猾な翁は、小都音みたいな若々しい喋り方をするの?」

「狡猾とまでは言ってないよ。」

藜は無罪とでも主張するような風に、頭を軽く振る。


「さすがに口調だけだね。
嗄れ声だけど。」

昌巳は面白そうに、目を細めて何かを考え込んでいるような小都音を見つめる。


気のせいだろうか。
ツグミは思う。
どうもこの伊達男が小都音に向ける視線には、熱が篭ってるような…愛情で溢れてる様な…。