自分から話しかけることも出来ない。 そう思ってたのに、今じゃこうして一緒に言葉を交わせてる。 夢なんじゃないかって、今のこのシチュエーションを疑ってしまうほどに。 「――いつも視線を感じるんだよね」 想いに浸っていると、唐突に奏君が口を開いた。 一瞬、ドキッと心臓が波打つ。 「…それも、毎回後ろの方から」 窓の外にある景色を眺めながら、薄く口を開いてそう呟く。 “何を言いたいの?” そう聞けばいいのに、今の私は再び鳴り始める胸の鼓動の音を奏君の耳に届かないようにすることで必死だった。