「あんた、てそんなツラしてもお父様の従者なだけあるわ。いうことが私のツボを押さえてる。けどねぇ、そーやって丸め込もうとしたってそうはいかないわよ、グラース。私はお兄様を回収次第、即刻あの屋敷から帰る方針でいくから」
「そ、そんなことおっしゃらずに、きちんとご主人様の名代として振る舞って下さい。ほら、ご主人様がお怒りになられますよ?」
「お父様のことなんてもう知らないわよ。第一、あの人って何を基準に腹を立てるのか、さーーーーっぱりわからないわよ。まあ、報復だけはおそろしいけどね」
ローズは言いながら両腕をさする。
ローズの父は、文武両道にたけた秀麗な紳士だ。しかし、性格は極めて複雑怪奇。普段からにこにことした笑顔の仮面をつけていて、その感情はつかみにくい。読書好きだが、特に推理物をこよなく愛し、何かと文句をつけてはローズもその押し付け”愛”の被害を受けている。それは勉学の形に昇華され、例の二日間にも推理問題として一つの科目へとのし上がっている。
推理といえば、とローズは思い出す。
ローズの父は、そのひねくれた性格から、誕生日のプレゼントもたとえば地図を渡して探せ、暗号文を渡して解読させ、といってように何かと推理に掛けてくる。
しかもなぜかからくり屋敷である家に、さらに推理とかませて隠してくるので、誕生日プレゼントを受け取るだけで一苦労だ。
(受難付きプレゼント、といういらぬおまけつきは、一体なんなのよっ)
どんな親だと、そのたびに思わされる。
間もなくして二人の船旅は、終焉の地――ローズに言わせれば陰湿で嫌いな本家を、迎えようとしていた。
広大な土地の上に建てられた、絢爛豪華な屋敷。
ローズは大きく息を吐いて、覚悟を決めた。
「仕方ない。今日は特別よ、グラース。行動は迅速に。さっさと済ませて帰るわよっ」
「そ、そんなことおっしゃらずに、きちんとご主人様の名代として振る舞って下さい。ほら、ご主人様がお怒りになられますよ?」
「お父様のことなんてもう知らないわよ。第一、あの人って何を基準に腹を立てるのか、さーーーーっぱりわからないわよ。まあ、報復だけはおそろしいけどね」
ローズは言いながら両腕をさする。
ローズの父は、文武両道にたけた秀麗な紳士だ。しかし、性格は極めて複雑怪奇。普段からにこにことした笑顔の仮面をつけていて、その感情はつかみにくい。読書好きだが、特に推理物をこよなく愛し、何かと文句をつけてはローズもその押し付け”愛”の被害を受けている。それは勉学の形に昇華され、例の二日間にも推理問題として一つの科目へとのし上がっている。
推理といえば、とローズは思い出す。
ローズの父は、そのひねくれた性格から、誕生日のプレゼントもたとえば地図を渡して探せ、暗号文を渡して解読させ、といってように何かと推理に掛けてくる。
しかもなぜかからくり屋敷である家に、さらに推理とかませて隠してくるので、誕生日プレゼントを受け取るだけで一苦労だ。
(受難付きプレゼント、といういらぬおまけつきは、一体なんなのよっ)
どんな親だと、そのたびに思わされる。
間もなくして二人の船旅は、終焉の地――ローズに言わせれば陰湿で嫌いな本家を、迎えようとしていた。
広大な土地の上に建てられた、絢爛豪華な屋敷。
ローズは大きく息を吐いて、覚悟を決めた。
「仕方ない。今日は特別よ、グラース。行動は迅速に。さっさと済ませて帰るわよっ」


