ちょうどローズの真向かいに座っているジュエルは、ローズと目を合わせてきた。


仕方なく見返すと、ジュエルはくすりと笑った。


「それにしても、よりにもよって何で今日来たの?“人殺し”だがら、無神経なのかしら?」


思わず眉があがったが、テーブルの下で必死にこぶしに力を込めてこらえる。

怒りが拡散されてから、冷静に考える。




(また同じ質問だわ。今日が何なのかしら?)




兄にきかれた。


そしてジュエルにも。




しかし考え込んでも、何の日かも皆目見当つかない。

国民的な行事もないし、私的な用事があった覚えもない。


それどころか、つい最近まで父親に付き合わされて付きっ切りで試験を受けていたローズは、はっきりいって日にち感覚も曜日感覚も未だにくるっている。
そんな自分に、今日という日が何なのかなど、わかるはずもない。


ローズにとっては、意味不明な問いかけでしかなかった。


「答えないの?ねぇ、答えられないの?」


愉快気にきかれる。


だからまた、混乱した。





(だから本家なんて、嫌いなのよ)




ローズは立ち上がった。



「失礼。気分がすぐれないので、このまま部屋に戻らせていただきます、ご当主様」



頭を下げ、兄に謝罪を込めた一瞥だけを残して、ローズはその空間から脱した。