冷蔵庫の領収書はそのままお客さんに渡して、パソコンの方は偽造している。それだけで理由は明白だ。
キャンペーン中、パソコン購入時にはメーカーから1万円のキャッシュバックがあり、それがもちろん領収書にマイナス1万円として記載され、値引きの形になる。
おそらくそれが西野の場合、マイナス一万円を伝票上あげてはいるが、そこを切り取って更にコピーし、何か理由をつけて、コピーの方を渡したに違いない。
その契約自体は私の記憶には全くない。だが、相手が老夫婦や子連れだったりした場合、契約コーナーではない入口などの広い待合で待たせ、その間に手早くすれば、コピーして差し替えることなど、容易い。
思い返せば、その新店は、コピー機がレジから少し離れている。人がいないタイミングを見計らえばできないことはない。
それに、伝票とレジの中のお金は合っているので誤差したことにはならないし、お客さんにも値引きの話をしなければそのまま通る。
だが、問題は何かあった時に、例えば修理などの問題が発生した時に何故コピーの領収書なのかと受付者が不審に思えば、そこで話はおしまいだ。
確率は確かに、低いかもしれない。修理が起こる可能性も半分もないだろうし、しかもそこで受付者が新人ならば、そのまま通ってしまうだろう。
つまり、実に簡単な種明かしで、簡単に1万円が手に入ることになる。
ただ、失敗すれば……。
「懲戒、解雇……。決まったんですか? でも、どうしてそんな……。他に何件もあるんですか?」
香月はたどだどしく聞いた。
「解雇は正式には決定してないが、もう決まりも同然だ。1万円でも横領は横領だ。余罪はないと本人は言っているから、魔がさしたのかもしれないが、それにしても領収書を偽造した辺りが手が込んでいる」
「……」
香月はテーブルに頭を伏せた。額に冷たいテーブルの感覚が伝わり、涙が横に流れたが、そんなことはどうでも良かった。
「……忘れてはいけないのは、香月も一応疑われているということだ。俺が防犯カメラで確認したから、一応疑いは晴れているが」
伏せた身体を起こし、
「宮下、部長が……」
と涙声で、なんとか言った。
「西野の売上で、契約は香月だ。ということは、領収書を渡した可能性が高いのは、通常の場合、香月だ」
飛び上がるほど驚いた。
キャンペーン中、パソコン購入時にはメーカーから1万円のキャッシュバックがあり、それがもちろん領収書にマイナス1万円として記載され、値引きの形になる。
おそらくそれが西野の場合、マイナス一万円を伝票上あげてはいるが、そこを切り取って更にコピーし、何か理由をつけて、コピーの方を渡したに違いない。
その契約自体は私の記憶には全くない。だが、相手が老夫婦や子連れだったりした場合、契約コーナーではない入口などの広い待合で待たせ、その間に手早くすれば、コピーして差し替えることなど、容易い。
思い返せば、その新店は、コピー機がレジから少し離れている。人がいないタイミングを見計らえばできないことはない。
それに、伝票とレジの中のお金は合っているので誤差したことにはならないし、お客さんにも値引きの話をしなければそのまま通る。
だが、問題は何かあった時に、例えば修理などの問題が発生した時に何故コピーの領収書なのかと受付者が不審に思えば、そこで話はおしまいだ。
確率は確かに、低いかもしれない。修理が起こる可能性も半分もないだろうし、しかもそこで受付者が新人ならば、そのまま通ってしまうだろう。
つまり、実に簡単な種明かしで、簡単に1万円が手に入ることになる。
ただ、失敗すれば……。
「懲戒、解雇……。決まったんですか? でも、どうしてそんな……。他に何件もあるんですか?」
香月はたどだどしく聞いた。
「解雇は正式には決定してないが、もう決まりも同然だ。1万円でも横領は横領だ。余罪はないと本人は言っているから、魔がさしたのかもしれないが、それにしても領収書を偽造した辺りが手が込んでいる」
「……」
香月はテーブルに頭を伏せた。額に冷たいテーブルの感覚が伝わり、涙が横に流れたが、そんなことはどうでも良かった。
「……忘れてはいけないのは、香月も一応疑われているということだ。俺が防犯カメラで確認したから、一応疑いは晴れているが」
伏せた身体を起こし、
「宮下、部長が……」
と涙声で、なんとか言った。
「西野の売上で、契約は香月だ。ということは、領収書を渡した可能性が高いのは、通常の場合、香月だ」
飛び上がるほど驚いた。

