絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

　言葉に詰まるのが嫌で、即答した。
「……子供の父親は……千さんじゃないかもしれないから」
「……」
　衝撃のセリフに、香月は唖然とした。
　相槌も打てない。
「先輩も、知ってる人です」
「えっ！？　誰！？」
「けど、その人とは結婚できません」
「え……」
　言葉が、思いつかない。
「愛花は、ここの保育園に預けることにしたんです」
「ここ？」
「病院には保育園が併設されてるんですよ」
「ああ……そうなんだ……24時間？」
「そうです。こういう、病気の人の子供をみる専用の保育園ですから。毎日お見舞いにも来てくれるし、心のケアとかもしてくれるんです」
「ああ……そうなんだ……じゃぁ、とりあえずは安心だね……」
　佐伯は不安そうに頷いたが、今はそれ以外の解決策は思い浮かびそうになかった。
「……ままぁ、チップが欲しい」
　娘は母親の指に話しかけている。
「あ、そうだ。ご飯食べてないんだった……」
「なんか買ってくるよ。何がいい？」
　一旦巽にも連絡をしようと、立ち上がった。
「私はパンがいいです」
「チョコパンね」
「はい、愛花は？」
「チップ」
「チップスターのコンソメとサンドイッチと、リンゴジュースの１００パーお願いします。あと、お茶」
「はいはい、了解。……愛花ちゃん、一緒に行く？」
　子供はすぐに首を振る。
「じゃ、行ってくるね」