絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「ええー……大丈夫なの!?」
『なんか……、流産せんようになんかしてるって。説明してくれたけどよーわからへん』
「えっ、えっ……死にそうなの?」
『いや、そんな雰囲気ではなかったけど……バタバタはしてるけど……俺もそんな深い話してへんし……』
「本人は喋れるの!?」
『今手術室』
「あそっか……子供は!?」
『いてるよ、ここに』
「……行くよ、今すぐ」
 香月は、巽に目で謝罪した。
 と、同時に、その辺りにちらばっている洋服を集め始める。
「どうしよ……どうしよ……」
『とにかく、産婦人科の前にいるから』
「あっ、うん……。着いたら電話するね」
『うん、はよ来て』
 ユーリの様子からして、子供の相手に惑っている……そんな気がした。
「ごめん……こんな時に……」
 言いながら、ジーパンを手にとり、またやめ、下着を取った。
「どうした?」
 巽も既に、白いシャツに腕を通し始めている。
「佐伯が妊娠してたって……おろしたって言ったのに、おろしてなかったんだ……」
「……それで?」
「で……、血が出て今手術してるって、流産しないための手術……」
「病院は?」
「桜美院」
 巽は着替え終わると電話を手に取り、ロビーに、車を回すよう伝えた。
「……送って行ってくれるの?」
「タクシーよりは早いだろう」
「……ああ……」
 なんとか、着替えることができるが、頭には、佐伯のことしか浮かばない。
「……産んで……どうするのかな……」
「裏千家の子だとしても、相手に言えば、揉めるだろう」
「……千さんがおろしてって言ったのかな……それが嫌で、産むことにしたのかな……」
「……分からんが」
「……」
 険しい顔をしたまま、部屋を出て、ロビーを抜け、巽の車に乗り込む。
佐伯……、昔はそんな子じゃ、なかったのに……。