「私でも……前みたいな、ループな大変な生活は嫌だ……」
「まだ貯金も残ってるでしょ? その間にお金持ち、探そう。今のままでいるより、絶対その方がいい」
 いいとは言ったが、金持ちを探すのが本当にいいのかどうかは分からない。
「……見つかるかな……」
「ダメなら四対さんになんとかしてもらおう、そうか、真藤さんでもいいじゃん!! というか、真藤さんは??」
「……あんまり知らない」
「そっか……、とにかく、出よう。出ようよ。もう今すぐ。ちょっとだけ荷物用意して、とりあえずうち泊まりに来たら?」
「……いいんですか?」
「いいよいいよ、おいでよ!!」
 香月は必死に誘った。そう、今のこの判断は絶対に間違っていない、そう信じて。
「行こう、佐伯……愛花(あいか)ちゃんも一緒に」
 香月はこのとき初めて名前を呼んだ。そう、しばらくだけは、家族になるんだ。
「電話もかけてないんです、最近。……」
「うちからかければいいじゃん。それで……、もう来ないっていうんなら、違う道、探そうよ」
「……、彼みたいな人、いるかな……」
「いるよ!! まだ若いから、あと20年くらいは探し続けても全然大丈夫だよ!!」
「20年……探しすぎですよ(笑)」
「けどそれくらい探したら……1人くらいはいるでしょ……」