絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

 考えてはみた。
「だけど、私のあんまり男友達いないから……」
 そうそう、夕ちゃんとか結婚してるし!!
 あ、そうだ、ユーリ!! けど……無理か……庶務課とじゃ、どうも合いそうにはない。
「よねえ……出会いってないものよねえ」
「松長君も離婚しないしね」
 今井は珍しくにやけて言った。
「……離婚待ちですか?」
 多岐川はすぐに聞く。
「ちょっと、みんなが勘違いするじゃない!!」
 庶務課は声を上げたが、図星のようだ。
「(笑)、みんななんとも思ってないよ」
 香月は慰めのつもりで、
「松長さんのこと好きな人、いっぱいいますよね」
「いるいるー、私の周りでもいます」
 多岐川が珍しく乗った。というか、ただ相槌したにすぎないか。
「松長さん、もしかしたら離婚するかもしれません」
 ここに来て、伊吹が小さく呟いた。
「えっ、ほんと!?」
 もちろん、誰よりも早く興味を示したのは、庶務課だ。
「僕も噂を聞いただけですけど、長松さんの奥さん、相当ホストに嵌ってるらしいです」
 伊吹ではなく、永井が得意の噂話を持ち出した。
「あー、そういえばそれ、私も聞いたことある」
 香月は薄い記憶をたどって言った。誰だったか……そう、佐伯が言っていた。
「けど、私が聞いたの、もう随分前だよ?」
「そう……奥さん名義の借金を会社に取立てに来たようです」
 意外に伊吹が現実味のある話を持ち出した。
「すごい!!」
 多岐川は何かに関心したが、今井は難しい顔で、
「もう離婚したってダメじゃん」
「まあ、奥さん名義なんだし……」
 成瀬がフォローする。
「僕が聞いた話しでは、奥さんはホストと結婚する気らしかったんですが、ホストも結婚してたみたいで……騙されたとか、なんとか」
 永井は続ける。
「へえー……」