絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ


「……仕事中じゃなかったんだ……」
「仕事中だ」
 中央ホテルでたっぷり一時間消費した後、シャワーをさっと浴びた巽は、再び不機嫌そうに言った。
「……社長っていいね、時間が自由で」
「呼びだされた以上は仕方ない」
「……どんな話したの?」
「お前に言ったことと同じことだ」
「……、ごめんね、別に迎えに来なくても良かったのに」
「無理矢理寝取られるのを見過ごすつもりはなかったからな」
「ねっ……そんなわけないじゃん!! 一応会社の人だよ??」
「そういう常識が一番やっかいだ」
「……確かに……。今から仕事?」
「いや」
「えっ!? じゃあなんでシャワー浴びてるの?」
「汗をかいたんでな、誰かさんのせいで」
「えっ、私!?」
「マーキングだ」
 巽は時々いやらしいことを、さらっと言う。おじさんの証だ。
「……、おじさんすぎるよ、おじさん」
「そうか?」
 巽はバスローブ姿でタオルで頭を拭きながら言う。機嫌がよさそうだ。
「……明日は仕事?」
「ずっと仕事中だ。だが今日の昼までは中休みをとってやる」
「昼まではって……」
 既に時刻は12時を過ぎていた。それで、巽は今日と表したようだ。
「あ゛―…、オーストラリアいきたいなあ……スキューバダイビングしたい」
「……四対なら連れて行ってくれるだろ?」
「……言ってみようか?」
 香月は巽の目をしっかり見て挑発した。