絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

 それにムッときた香月であったが、無言で従い、中へ入る。
「……こんばんは……」
 場違いな挨拶な気がしたが、香月は一応風間に挨拶をした。
「こんばんは」
 風間はそれ以上何も言わない。忙しい中来たのかもしれないな、と香月は思い始めた。そういえば、最初に麻美がこちらに連絡をよこした理由を、まだ聞いてはいない。
 巽はそのまま伊吹と立ち話をしている。どちらの顔もここからはよく見えないが、次に麻美がここへ乗り込んで来たとき、彼が不機嫌であることは、ほぼ間違いないに違いない。
 予想通り、5分程度で話は終わり、巽はすぐに乗り込んでくる。車もすぐに発車した。
「……、」
「どいつもこいつも……」
 巽は予想通り明らかに不機嫌であった。
「……ごめん……」
 言い終わる前に、巽の手が顎に回り、唇を奪われる。
「……ん……」
「気分が変わった。このまま、中央ホテルに回ってくれ」