絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「……将来って」
「和菓子屋の次男坊なんて、ダサいですか?」
「そんなダサいって……、他に、伊吹さんなら他に、結婚してほしいって思う女の人がいっぱいいますよ、きっと」
「僕が選ぶ女性でないと、意味がない」
「ほら!! 同じですよ!! 私だって、私が選ぶ人じゃないと意味がない」
「……頑固ですね」
「……」
 彼女はふいっと、そっぽを向いて見せたが、このままここで彼を待つようだ。
「……すみません、浮き足立っていると自覚はしています。あなたと話ができるだけで、僕はいつもの僕じゃいられないんです」
「あーそーですか」
「だけど、どんな人があなたの今の彼氏でも、僕は自信を持って、あなたを幸せにできると断言できます」
「……」
 そう言われた時の巽は、一体どんな表情をするのだろう……。
「あれ……来た」
 予想より十分も早くエントランスに入ってきたセンチュリーは、堂々と停車してみせる。運転しているのは、風間だ。
 先に風間が降り、次いで、後部座席のドアを開けると、中からダークスーツの男が出て来る。
 巽は、こちらをちら、と見ると、顎で中へ入っていろ、と指示をした。