絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「私は誰とも結婚しません。そんな……、あなたみたいに、理想のお嫁さんを探しているような人とはなおさら」
「何故です?」
「……私には、彼氏がいます。今の彼氏とは絶対に別れません」
「結婚するのですか?」
「……分かりません。そんなこと。でも、絶対に別れません」
「……結婚はしたくないのですか?」
「……私は……、あの人以外の人とは結婚しません、絶対に」
「何故です?」
 その、泣きそうな表情をなんとか和らげてやりたかったが、口が止まらなかった。
「……、どうしても、です。私はあの人じゃないと、生きて行けない。だからです。……」
 彼女は、手にしていた布巾をそのままテーブルに置くと、バックを持ち始めた。
「帰ります、私、そういうことなら、もうここへは来ませんし、お話することもできません」
「待ってください」
 彼女は最後の質を聞いてか聞かずか、そのまま、立ち去ろうとする。
「僕にだってあなたしかいない、僕は確信しています」
 彼女はなんとか立ち止まり、振り返ると、一言だけ言った。
「私には、彼しかいません。あなたが言う、私しかいない、と、私が言う彼しかいない、は全く別物なんです」
 そのまま玄関の方へ進んで行ってしまう。
 ここで負けてたまるかと、後を追いかけ、思い切って背後から抱きしめた。
「ちょっ!?」