「……どうでしょう……、いいですよ、そのままで」
「いえ。片づけくらいなら、できますから。けど、今井さんの鍋、美味しかったですね! やっぱ料理くらいできないとなあ……」
「レシピ、聞いてたじゃないですか」
「聞きましたけど(笑)、作る時、あるかなあ」
「じゃあ今度、作って下さい、僕に」
「……」
彼女は片付ける手を一瞬止めたが、すぐにまた動き始めた。
「……家族にも作ってあげなきゃですね、私の家族……」
「僕じゃダメですか?」
彼女はゆっくりとこちらを見た。その距離はほんの一メートル。手を伸ばせば捉えることが十分できる距離。
だが、彼女はすぐに目を逸らす。
「今の彼氏じゃなくて、僕じゃダメですか?」
「……」
言い返す方法を考えているのか。
「僕はずっと香月さんのことが好きでした。あの日、あの時、話しかけてくれたことがどれほどうれしかったことか」
「……」
「あなたのことを知らない社員はいない。僕もそのうちの一人です。あなたにずっと憧れて来た。そのあなたがこんなにも僕に優しく接してくれて、僕はまるで夢を見ているようです」
「いえ。片づけくらいなら、できますから。けど、今井さんの鍋、美味しかったですね! やっぱ料理くらいできないとなあ……」
「レシピ、聞いてたじゃないですか」
「聞きましたけど(笑)、作る時、あるかなあ」
「じゃあ今度、作って下さい、僕に」
「……」
彼女は片付ける手を一瞬止めたが、すぐにまた動き始めた。
「……家族にも作ってあげなきゃですね、私の家族……」
「僕じゃダメですか?」
彼女はゆっくりとこちらを見た。その距離はほんの一メートル。手を伸ばせば捉えることが十分できる距離。
だが、彼女はすぐに目を逸らす。
「今の彼氏じゃなくて、僕じゃダメですか?」
「……」
言い返す方法を考えているのか。
「僕はずっと香月さんのことが好きでした。あの日、あの時、話しかけてくれたことがどれほどうれしかったことか」
「……」
「あなたのことを知らない社員はいない。僕もそのうちの一人です。あなたにずっと憧れて来た。そのあなたがこんなにも僕に優しく接してくれて、僕はまるで夢を見ているようです」

