絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ


 なんとも静かな鍋パーティであることに、気づいているのは、おそらく全員だ。そのことに気遣って、はしゃいでいた彼女ももうネタがなくなったのか、箸を置いてしまっている。
 簡易IHも切ってしまえば、雑炊でも、と考えていたが、誰もそれを言い出さない。
「……私、そろそろ……」 
 今井的にタイミングを見計らっていたのか、スイッチを切った途端、腰を上げた。
「じゃあ僕、送って行きます」
 間髪空けずに、清水が口を開いた。
「……」 
 今井はそれに何とも返事をしない。とりあえず、そのまま二人で玄関から出て行くようだ。
「じゃあ私も……」
 と言いかけて、彼女は止まり、
「私は、片付けてから帰りますね」
「悪いわね」
 今井は珍しく、そう言う。
「いえ……」
 と言い切らないうちに今井は、くるりと振り返り、清水は軽く頭を下げてから後を追う。
 2人が帰ってからの方が、空気は明るくなった。それくらい、あの2人は何か分からない、爆弾を抱えていたような気がする。
「うまく行ったんですかね、あの2人……」
 彼女は、皆の皿を重ねながら言い始めた。