絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「え、違いますよ。友達です。友達」
 彼女は笑う。
「……すごく親しそうだったので……」
「ああ、あの人は誰にでもああなんですよ。自分の返事一つで全てを動かせると思ってるんじゃないですかね、まあそうかもしれないけど」
 彼女はこちらを見てはいない。
「……よく食事に行ったりするんですか?」
「うーん、まあ。突然仕事の時間が空いたとか、そういう感じで。社長って好きに時間利用できるんでしょぅね」
「……」
 そのまま食品用レジに来てしまったので、一旦会話は途切れた。
 後は酒売り場で酒を買って、帰るだけ……。
 香月は精算した食品を手際よくビニル袋に詰め込み、それを伊吹が両手に持つ。
「どのくらい買いましょうか、今井さん、どのくらい飲むのかなあ」
「香月さん、飲みませんか?」
「えっ……まあ、少しくらいなら」
「この後、デートですか?」
 目を合わせると、彼女の表情が一旦停止した。いけない、真剣な顔をしすぎた。
「え……あ、まあ……」
「……、他に、彼氏がいるんですね」
「他にって……」
「四対財閥じゃない人です」
「え……まあ、……、四対さんとはただの友達です。……、そんな風に見えましたか?」
「……多少……」
「まあ……、なんというか、例えば、四対さんと、彼氏と何が違うのかと言えば……そりゃ、色々違いますけど、四対さんの方がいまどきなのかなあ……」
「いまどき、とは?」