「あ、あのー!!!」
 ユーリはまだ相手と5メートルは距離があるのに、いきなり精一杯大きな声を出した。
「……」
 すると、電信柱の女の人はそれに反応したのである。目を開けて、呆然としているようだ。
「きっ、救急車、呼びましょうか!?」
 香月は傘どうしが重なり合うのを無視して、ユーリの腕を思いっきり掴んで言った。
「……」
 だが、女はそれには答えず、私の顔を見ると驚いた表情を見せた。しかも、そのまま動かない。
「えっ、な、に??」
 とっさにユーリを見た。
「知り合い??」
 ユーリの問いかけに香月は横に大きく首を振る。
 女は、右手を軽く伸ばし、左手で腹を抱えたところで、大きく咳き込んだ。
「えっ!?!? どっ、どうする!?!?」
「救急車呼ぼう」
 そこは、芸能人なのかどうなのか、ユーリは、信じられないくらい機敏に携帯を取り出した。
「連絡しないでっ……」
 小さく声が聞こえる。以上、そのまま女は腹に手を当てたまま前のめりになり、2人は完全に死んだと思い込んだ。