そういうところがまた、香月らしい。
「その、危ない人とはもう切ったのか?」
 香月は一瞬遅れてから返事をした。
「ああ、はい、大丈夫です。連絡もとってません」
「それならいいけど……」
 香月はそこでジュースをごくごくと飲んだ。
「それから……」
「はい」
「香月に伝えるのは、どうかと悩んだが、一応、報告だけはしておく」
「はい」
 彼女は不安そうな表情を見せた。
「人事部の涼屋から聞いたんだ。香月の彼氏が警察に追われてるって」
「またですか!? あの人、ほんっといい加減にしてほしい」
 香月は、見る間に憤慨した。
「涼屋の勘違いか?」
「当たり前ですよ! 昨日なんか、家まで来たんですよ!? 何なのかしら」
「家まで? 東京マンションまでそれを言いに?」
「そうですよ。今の……彼氏が経営しているお店に空き巣が入ったことで、警察が捜査してるんです。ただそれだけのことなのに、何か勘違いしてるんですよ、あの人」
「あそう……、なんだ、そういうことだったのか」
「それを説明したって、僕にはそうは思えないって。全然意味が分からない」
「ああ、なんかすごく真剣に……、その、香月さんと前付き合ってたなら、僕の相談に乗って下さい、って来て、その話をするからさ。だから、本人から口止めされたなら、他言するなってことと、付き合ってたっていうのは噂だ、ということを念を押しておいた」
 早口で言った。噛まなかったのが、信じられないくらいに。