絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

 警察だと名乗る芹沢はすぐに否定した。
「さあ……僕は聞いたことないけど」
 永井のデータは既に検索することをやめている。
「僕も。特に僕は昨日喋ったのが初めてです」
 そこまで言うものなのかどうか分からないが、正直に話した。
「僕が会社で同じ課にいるのでたまた2人を食事に誘いました。それだけです」
「……そうですか」
 これが、刑事、というやつなのだろうか。しかし、彼は何もメモをとっていない。
「いえ、すみません。お時間とらせて申し訳ありませんでした」
 芹沢は慣れた風に丁寧に謝る。
「香月さん、何か事件に巻き込まれているんですか? この前のビルでの発砲事件、彼女が狙われたって聞きました」
 涼屋は真顔で聞いた。だが、芹沢はすぐに笑顔になる。
「いいえ、発砲事件とはまた別の事件で……彼女とは直接関係はありません。
 すみません、お食事中に。では」
 彼はすぐに後ろを向いた。質問されるのを避けるかのように。
「……びっくりした……、刑事、かな?」
 涼屋は永井に聞いた。
「かな。けど、なんだろう。その、親しい男の人っていう人がなんか、事件に巻き込まれているのかな。けどそんなの本人に聞けばいいだろうし……その本人が何かの犯人、とかかな?」
「……」
 同じ考えに行き着いたことに、ショックを受けてしまう。