「……。全然意味わかんない」
 話の流れは理解したが、斉藤の気持ちまでは理解できなかった。
『……とにかく、この件は終わった』
「……葵ちゃん、つまり……その、二股かけてたってこと? あの木内って人とその斉藤って人と」
『憶測だが』
「……そんな風にぜんぜん見えなかった……」
 今も全く想像できない。西村がこちらに見せていた物は、香月と同じように、誰も知らない新しい自分だったのかもしれない、とふと思った。
『で』
 巽が強く言う。
『本題はここからだ。
 芹沢奏が刺された。今病院で手当を受けている。致命傷ではない』
「えっ……、せり?」
『お前にも一応SPをつけてある』
「え? エスピー?」
『特に気にすることはない。だが、芹沢に近づくのは危険だ』
「……近づいてないよ。あっちが勝手によってくるだけで……」
『見当はずれもいいところだ。とにかく、会社以外は出歩くな。また、連絡する』
 電話はこちらの声も待たずにすぐに切れてしまう。
 芹沢がさされた……刺された?
 殉職という言葉が頭に浮かぶ。
 完全に目がさえてしまった。
 芹沢が……死ぬ……、いや、致命傷ではないと言った。
 ……誰に……刺された……??