紺野が見せる表情が今までと全く違う。
 そのことに、深いため息を吐きながらベッドにもぐりこんだ。
昼間、別れてから巽からの連絡はない。
 一体、何がどうなっているのかさっぱりである。
 警察に重要参考人で召致されられたと思ったら、警察署に着くなり解放になるし。
 それにしても、西村の父親が代議士であることは全く知らなかった。そういう雰囲気を全く感じさせない普通の女の子だったのに。
 それに、斉藤は何故私を狙ったのか、不明だ。
 そういえば、斉藤は誰かを人質に立てこもっていたのではなかったか、それはどうなったのだろう。
 薄れ行く意識の中で、今日最後の出来事を考えながら眠りにつこうとする。
 だが、まだ完全に眠ってはいなかったようだ。
 暗闇の中で電子音が鳴り響いた時、それほど不愉快ではなかったからである。
「もしもし!?」
 巽はいつもより早口で話しを始めた。
『まだ寝てなかったのか?』
「うん、半分寝てたけど。今どこ? 大丈夫なの?」
『今はまだ仕事の途中だ。特に変わりもない』
 少し溜息をついているところをみると、やはり彼も疲れているようだ。
「ね、あのさ、さっきのこと、もっと詳しく聞きたいんだけど」
『無理をしなくてもいい。お前が知っていることはたかが知れている』
「え……」
『エースのオーナーから電話があった。お前がサツに連れて行かれそうになっていることを』
 夕貴が、巽に連絡してくれたんだ……良かった、あれは本当に偶然だったから。
「やっぱり……あなたが助けてくれたんだ」
『知っていることを全て吐いたとしたって、何も変わらん。自分のナリだけ心配していればいい』
「だって……」
 そんなこと言われたって……。
「あそうだ。あの斉藤って人、どうなったの?」
『妻子ある斉藤と西村葵の仲に反対した西村代議士から斉藤が銃を奪い、西村葵を人質に、西村の別荘に立てこもっていた。以前、ディズニーランドで木内らと俺たちの4人でいただろう? そこを斉藤が目撃したと考えると、全員を巻き込みたかったと思われる』