絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「しっくりきませんね。僕には、以前、あなたは巽からその話を聞いた、としか思えません。彼女は誰かと結婚させられた……そうではありませんか?」
「だとしたら、その、戸籍帳とか見ればすぐに分かるんじゃないですか?」
　素人意見を述べたが、それが一番良い方法かもしれない、と香月は思った。
「あなたがもっと素直に説明してくれれば、その手間が省けて、彼女をすぐに助け出せます。もう一度聞きます。彼女を見たことは、ありますか?」
「……………」
　長い沈黙が続いた。言うべきか、言わざるべきか、どこまで言うべきなのか……。
「お願いです、生きているかどうかだけでも、知りたいんです！！」
「……」
　ふと香月は思った。
「それで警察になられたんですか？」
　初めて、落ち着いて坂上を見た。
「ええ」
　彼女は自信ありげに答える。
「なら、一般人の私よりも、遥かに情報を知っているはずです。そんな……私なんかに分かるはずがない」
「いや、僕が聞いているのは、彼女を見たかどうかです」
　紺野がすかさず言う。