「分かりません」
言い切る。そう、全ての人は、客として対応したことがあるかもしれないし、ないかもしれない。そんなのいちいち覚えていられない。
「それ以外に見た覚えはありませんか?」
「そりゃ、もしかしたら、美容室とかで見たかもしれない。もしかしたら、レイジのパーティ会場とか、ディズニーランドとか、大勢の中で出会ったことがあるかもしれない。けど、私は忘れました」
「名前も知りませんか?」
「知りません。……だから、あなたが……坂上さんだから、坂上なんとか、というのでしょう?」
手帳を見ながら思いついたこと全てを言った。
「違います。私は結婚しています」
「そうですか、じゃあなおさら知りません」
坂上が意外にも結婚していた事実に驚いてから、息を整えた。
「どうしてそこまでして、巽を庇(かば)うんですか」
紺野が全く違う質問を投げかけてきた。
「庇ってなんかいません。例え巽が私を庇うことがあっても、私は巽を庇えるはずがない」
「というと?」
紺野は顔を顰めた。
「私の支えとか、援助とか、そういうのがなくても生きていける人です。そんなの、頼りにしていない」
「……妹は今、生きていると思いますか?」
坂上が泣きそうな顔で話を元に戻した。警察なのだから、それは演技かもしれない、だけどその時はそう思えなかった。
「……誰かと結婚して、きっと生きていると思います。ただ、好きな人と結婚したかどうかは分かりません」
できるだけ、曖昧に答えた。
「……」
「……そう、ですか……」
坂上は少し、納得したような、それでいて不安気な微妙な表情を見せた。
「他には?」
紺野が聞いた。
言い切る。そう、全ての人は、客として対応したことがあるかもしれないし、ないかもしれない。そんなのいちいち覚えていられない。
「それ以外に見た覚えはありませんか?」
「そりゃ、もしかしたら、美容室とかで見たかもしれない。もしかしたら、レイジのパーティ会場とか、ディズニーランドとか、大勢の中で出会ったことがあるかもしれない。けど、私は忘れました」
「名前も知りませんか?」
「知りません。……だから、あなたが……坂上さんだから、坂上なんとか、というのでしょう?」
手帳を見ながら思いついたこと全てを言った。
「違います。私は結婚しています」
「そうですか、じゃあなおさら知りません」
坂上が意外にも結婚していた事実に驚いてから、息を整えた。
「どうしてそこまでして、巽を庇(かば)うんですか」
紺野が全く違う質問を投げかけてきた。
「庇ってなんかいません。例え巽が私を庇うことがあっても、私は巽を庇えるはずがない」
「というと?」
紺野は顔を顰めた。
「私の支えとか、援助とか、そういうのがなくても生きていける人です。そんなの、頼りにしていない」
「……妹は今、生きていると思いますか?」
坂上が泣きそうな顔で話を元に戻した。警察なのだから、それは演技かもしれない、だけどその時はそう思えなかった。
「……誰かと結婚して、きっと生きていると思います。ただ、好きな人と結婚したかどうかは分かりません」
できるだけ、曖昧に答えた。
「……」
「……そう、ですか……」
坂上は少し、納得したような、それでいて不安気な微妙な表情を見せた。
「他には?」
紺野が聞いた。

