絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「二度と会うな。過去の甘い感情も、捨てた方がいい」
「それは私が決めることです」
 素早く言い切った。
「何度俺が命を繋いでやったと思ってる」
「それは、あなたがいたから危険なことに巻き込まれただけで、例えばあなたといなかったら違っていたと思う。だから、あなたに責任があるんだと、思う。絶対」
 珍しく巽は、そこで一間置いた。
「……そもそも、違うのかもしれないな……。いた世界が」
 巽はふと目を逸らした。
 突然、怒りが悲しみに変わっていく。
 どうして、何で、そんなこと、言うの?
「降ろして下さい」
 香月は風間に言った。だが、風間は香月の命令では動かない。
「もう降ろして。ここでいい」
 皮肉にも、ここはまだ中央駅の手前であった。
「停まれ」
 巽は加須間に指示をする。もちろん、車は簡単に路肩に停車した。
 香月はすぐにドアの方に寄る。そして、
「頭冷やして来る。また、電話するから」
 バタンとドアを閉めた。そう、そう言わないと、また連絡が取れなくなって、全部私のせいにされる。いや、私のせいだけど……。
 巽のベンツが出た後で思い出した。そうだ、まだその、斉藤という人は捕まってないんだったっけ……。なのに私、こんなところで下ろされた??
「あっ、香月さん!!」
 背後から突然大声で呼ばれてどきりとした、すぐに相手はこちらの前に回る。
「心配しましたよ、大丈夫でしたか!?」
 紺野の表情は、真剣に心配していたととれる、清清しい顔でもあった。
「ちょっと、話を聞かないと。坂上さん、先に行ってて下さい」
 ああ、隣にいたのか。坂上新人は。しかし、彼女は上司の言うことを聞かない。
「いえ、私もここにいます。あっちはもう、人がいると思いますから」
「……」
 紺野は何も言わない。
「とにかく、車に乗って下さい」
 そう、ここは中央駅の入り口であって、人の出入りがかなり激しい。こんなところで立ち話など、若いカップルでなければ到底できないであろう。