絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「えっ? ど、どうしてですか?」
「噂をよく耳にします」
 一体どのような噂なのかと、返す言葉も出ない。
「この上なく美しい女性が、巽を虜にしている、と」
「そんな……まさか」
 香月が眉間に皴を寄せるのを見て、リュウは長い髪の毛をさらりと流し、笑った。
「ところで、今日は警察に私の居所を聞いた、と聞きましたが」
「そうです。なんだかよく分からないけど、誘拐事件が起きたみたいで。その聞き込み調査に偶然遭遇して、で、その警察官が顔見知りだったんですけど、私のことをなぜか調べ上げていて。
 で、その人がリュウさんが京都に来ている、と言いました」
「……その警官の名前は?」
「紺野総さん……あ、そういえばこっちは偽名かもしれません」
「何故警察官が偽名を?」
「自分で言ってました。普段は編集者のふりしていろいろ情報を集めるけど、本当は警官だって。警察手帳を見せてくれた時に名前が違っていたけど、すみません、忘れました」
「……妙な警官ですね」
 リュウは視線をきつくして、サイドウィンドの外を眺めた。