絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ


 午後4時。香月は予定通りその時間に立ち上がると、隣の佐藤課長に声だけかけて外へ出た。宮下はいない。運がよかったのか、悪かったのか。
 ぼんやりエレベーターで下降する。ため息が出た。エレクトロニクス、やっぱりやめようか……。やめると言ったとしても、やはり副社長は、四対の読みどおり、何も言わないのだろうか……と今日何度目かの同じ考えを頭に巡らせる。
 溜め息は深い。
 軽い電子音と共にドアが開く。どうしよう、明日、休みたいな……
 あ、そうだ。裏口だ。
「!!!」
 方向転換しようとした途端、誰かから右腕を押された。
 不意の、しかも、かなり強い力に対応することができず、完全に吹っ飛んでしまう。
 それと同時に、パアアアアアアンと、耳が裂けるような爆音が響いた。
 次いで、火薬の臭いがする。
 周囲が一気にざわめき始めた。悲鳴も聞こえる。
 誰かが起こそうと、両脇を抱えてくれた。
 あ、バック。と思う間もなく、足が浮き、そのまま引きずられる。
 え??
「大丈夫ですか!?」
 大声に振り返ってみると、スーツの男性が座り込んでいて、その下から赤い、赤黒い液体が見えた。
 え、血?
 そこまで。