「あのさあ、すっごく重要なことなんだけど」
「何?」
 対面して座椅子に座った四対は、美味らしい黒豆をあてにビールを飲んでいる。
「私ずっと気になって仕方ないんだけど」
「何だよ」
「最上が結婚してること、高一郎さんは知ってるのかなあ……」
「……さあ。少なくとも俺は今聞いたけど」
「子供もいるんだよ、一人。今日だってこんな……泊まりなのに大丈夫なのかな」
「大丈夫なんだろうよ。高一郎が無理矢理連れて来るような奴に見えないだろ?」
「だけど……。最上、無理して来てるんじゃないかな……」
「聞いてみたら?」
「聞けないから困ってるの!」
「何で?」
「だって……もし、家庭捨てたいとか言われたら、私どうすればいいの!?」
「別に、お前がどうする必要もねーじゃん?」
「私はそうだけど……。けどだってさ、最上は多分、千さんのこと好きだろうなあ、って気がする。千さんはどうなのかな?」
「さあ」
「さあってね!! そんな簡単なことじゃないよ!」
「だって考えたって仕方ねーだろ! 本人じゃないんだからさ」
「まあそうだけど……」
「心配なんだったら聞いてみればいいじゃねえか。けど、聞いたってお前ができることは何もないと思うぞ」
 四対の、的を得た言葉に更に落ち込む。
「あーあ……来るんじゃなかった……いや、来た方が良かったのかな……」
「何で?」
「だって……私がこなかったんなら、最上が来なかったっていうんなら、私は来なかった方が良かったし、けど、私が来なくても行くって言うんなら、来てよかったし」
「何で?」
「もし、例えば旦那さんとかにばれたらさ、いや実は私も一緒に行ってたからって」
「で?」
「だから大丈夫だったよって」
「浮気じゃなかったよって?」
「うんまあ……」
「そんなこと別に誰も考えてないんじゃね?」
「えー……そうかなあ……」
 四対は瓶ビールを一人で傾けた。