「……そうかもしれない。私、四対さんと仲がよくて……。そのことを副社長が買ったみたい。分からないけど、多分そう」
「もし、お前が四対に働きかけることで何かが得られるのなら、その考えは間違っていない。俺でもそうするだろう。しかし、それは四対と知り合いだというお前の魅力なんじゃないのか」
「そんなの……ただの友達なのに……」
 香月は溜息と同時に、歯を食いしばった。
「友達には優劣がある。今、国を動かす四対財閥の権力者をうんと言わせることができる人物が社内にいるとすれば、それはかなりの力になることは間違いない」
「……そんなにすごい人なの、あの人?」
 香月はようやく後ろを振り返った。
「俺もその力を借りたいくらいに」
 巽の目が半分本気な気がして、香月はすぐに逸らした。
「全然……信じられない。傲慢な人だよ。全然、私の意見なんていつも関係なし。最初の頃なんて、勝手に副社長に話とりつけて、私を有給にしてたんだから」
「かなりの熱の入れようだな」
 話がそれるような気がしたので、柔らかくし直す。
「だけど行くところは皆でプールとかそんなもんなんだよ? だから、いつもそういうことをしてる人なんだよ。だってちょっと携帯いじったらいっぱい社長とかの番号が出てきてさ。それを普通に遊びに使う人が国を、日本を動かすだなんて、ちょっと今の日本が信じられないよね……」
 正論のつもりで言った。