絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「分かったよ。かけるよ、俺が」
 え、いや、どっちが電話をかけるとかそういう議論ではなかったはずなんですけど。
「えっと、その、じゃあまあとりあえず持っては帰ります。私急いでるんで」
 もうなんでもいいやと、とりあえず言いなりで、携帯を手に持つ。
「……」
 四対は無言でこちらを見ようともしない。
 香月は自分でドアを開けると、そのまま降りた。何も考えず。四対が何をどう思って携帯をよこしたのかは今はもうどうでもいい。
 目の前にあるのは、昨日一昨日のおそらく無断欠勤と、これからの仕事。
「あーあ……最悪だ」