下りて来たエレベーターに乗り込み五階を押す。

二人きりの空間

『辛い!』
いきなり社長はそう言うと、少し距離を置いて立っていた私に口移ししょうとした。
間一髪逃げ切り
『はぁ?』
『お前入れすぎ』
『わかりましたから、そしたらここに出して下さい』と自分の手を差し出すしかすべがなく、無残にも私の手には、数個の社長の口から吐き出されたフリスクが乗っかる事になった。

人生初の経験と共に (なんじゃこいつ!酔ってる?)
私の中に嫌悪感が増大した。

店に入ると客はおらず、カウンターに並んで座った。
店長とは私も仕事上面識があるので、軽く挨拶する。(早くおしぼり出して! )
と思いながら···
手近にあった灰皿にフリスクを捨てた。

社長と店長は話しに夢中だ。出されたおしぼりで、念入りに手を拭いた。

話しが一段落つき、社長はビール私は、カンパリオレンジを注文した。

店長が、奥に引っ込んで準備を始めると再び広い店内は二人になった。

私の警戒心は解かれてはいないが、さすがにすぐ近くに知り合いが居るのだからと思い込んでいた。