「・・伴奏の途中、眠ったように目ぇつぶっててさぁ。そんなのに、伴奏だけは続いてんの。そんで、拍手の音で目が覚めたかのように、また目ぇ開いて、ステージ降りてきてたんだぞ?」

「え?あたし、そんなことしてた?」

「・・おう。周りの奴ら、めっちゃ動揺しててさぁ。俺も流石に驚いた。」

「そ、そっか・・・。」

あのときの感覚は

そのせいだったのかな・・・?

まるで、何かに突き動かされてるみたいに

指が勝手に動いて。

意識だけは朦朧としていて。

でも、そう・・・

自分が弾いてるんじゃなくて

ほかの誰かが弾いているのを、隣で見ていたような

あの感覚。



「・・でもま。お疲れ。お前は、すげー奴だよ。」

どうなってたかわかんないけど

それでも

こんな風に、翔人が笑ってくれるなら

それでいいって思えるんだ。