「・・・璃裡。」

「しょ、翔人・・・。」

「ちょっとこい。保健室。」

「あ、えっ?わっ・・・。」

苺ちゃんの後ろを歩いていたあたしを

ひょいっと捕まえて、保健室へ。

わわっ・・・

急にどうしたんだろう?



「しょ、翔人?」

「・・・手ぇ、見せてみ?」

「は、はいっ・・・。」

さっきまで震えてたのだから

そんなに簡単に震えが止まるわけもなく。

カタカタ小刻みに震えた手を

あたしは翔人に差し出した。

「・・・もう3日前だもんなぁ。やっぱ、緊張してんだ。」

「ん、うんっ・・・。怖いの。本番失敗しちゃいそうで。」

「・・お前、上手く弾けてんじゃん。だいじょぶだって。」

「ダメなの。あたしね、ほんっとに本番弱くて・・・。」

あたしは、ぎゅっと目を閉じようとした。

でも閉じられなかった。


目の前にいる、翔人が

目を閉じた一瞬に、いなくなってしまいそうで。

1人になるようで、怖かったから。