「…龍輝がそばに居てくれたら、私も直人さんも哲も毎日凄く楽しく過ごしていける。って思ってた。
でも龍輝は、今の生活が好きなんだね」
……寂しそうなその顔に、どう言えばいいか迷う。
「…美奈の気持ちは、凄くよくわかる。
俺もここに来てすげー楽しいし、親父の話とか出来るのはすげー嬉しい。
“このまま住もうかな”って本気で思った。
だけどやっぱり俺、横山さんたちの邪魔はしたくないんだ」
そう…俺は「笠井 龍輝」であり、「横山 龍輝」じゃない。
美奈も直人さんも哲も、“家族”には変わりないけれど。
でもやっぱり、ずっと一緒に住むってことは出来ないと思う。
「…横山さん、か。
そう言われちゃうと、凄く距離を感じるね」
「ごめん。でもそれが俺の気持ちだよ」
「そっか」
……親父や俺のことを大切に想ってくれてる美奈と直人さん。そして、二人の息子の哲。
その3人の幸せを邪魔するなんて、やっぱ出来ねーよ。
「…つーことで、明日には帰るよ。
今日一緒に居られて、すげー楽しかった。ありがと」
言いながら席を立ち、飲み終わって空になったコップを流し台へと運ぶ。
「ねぇ龍輝」
「んー?」
「アンタ、しばらく泊まりなさい」
「…は?」
……いや、え? なんでそうなんだ?
今の今まで話をしてて、それで納得してくれたんじゃないのか?
「“ここに住め”とは言わないけど、せめて長期の休みくらいウチに泊まりな?
ほら、進路のこととか色々話したいこともあるでしょ。 ね?」



