週末の薬指

「三年?……って、どういう……」

言葉を失いそうになるけれど、どうにかこれだけ。

呟きに近い声は、ちゃんと夏弥に届いたんだろうかと思いながらも視線は外さないようにして。

「花緒の気持ちが壊れて入院してる時、ちょうど俺は宣伝部から営業部に戻ったんだ。その挨拶もかねて花緒のおばあちゃんに会いに行ったら、病院に行くところで。俺の車で送っていった流れで病室まで荷物持ってついて行って。
で、あまりにも可愛い花緒ちゃんに一目ぼれ」

その時の事を思い出したように、小さく笑うと、

「どうして入院する事になったのかは教えてもらえなかったけど、そんな事はどうでも良かった。
これからを花緒と過ごせるようにするにはどうすればいいかってばかり考えてたな」

「あの時、病院に来たの?」

「ああ。花緒が病院の中庭のベンチに座って読書してたり、のんびり散歩してたり、時々つらそうに泣いてる時にも俺は遠くから見てたよ。……ほんと、自分でもどうかしてるって思いながら何度も病院に行った」

「……嘘、全然気づかなかった……」