週末の薬指

「あ、おれの会社のCMだな」

夏弥さんが勤務する会社は、業界一位の住宅会社というだけあって、CMが流れる回数も結構多い。

二人で画面を見ていると、真っ青な大空の下に建っている家が何棟か映し出され、それは一つの街という設定のようで、色々なタイプの家族が順番に映し出された。

二世帯同居の家族や両親と子供二人の家族、そして新婚を思わせる若い夫婦。

「あ……」

思わず声が出た。

「あ、梓……美月 梓……」

画面から視線が動かせなくなった。まるでモデルルームのように綺麗な家、そしてそのリビングで犬と戯れている新婚夫婦らしき二人。

奥さんは、美月 梓。

薄手のピンクのセーターと真っ白なスラックスをはいて笑う彼女はとても綺麗で、明るい陽射しが差し込むリビングに馴染んでいる。

「そう言えば、彼女……夏弥さんの会社のCMに何年も出てるね」

思い出したようにそう呟くと、夏弥さんが軽く頷いてくれた。

「5年くらいになるな……。宣伝部が彼女を気に入ってるから毎年かなりの契約金払って継続してる」

CMが終わって、画面は違うCMを映し出しているけれど、何となく目が離せなくて、そのままでいると。

隣に座っている夏弥さんが私の顔をぐっと自分の方に向けた。

突然、力任せに顔を掴まれた私は態勢を崩してしまって、思わず夏弥さんの胸に手をついた。

「ちょっと、何、突然……」

あまりの強引さにちょっと首も痛い、一瞬顔を歪めた私に構うことなく、夏弥さんはじっと私の顔を覗き込んだ。

その目は少し面白がっているように細められていて、まるで子供がいたずらをしかけるような、そんな色が見える。