週末の薬指

*   *   *


ひとしきり抱き合って、気付けば息も荒くお互いを見つめ合っていた。

キス以上に進む雰囲気ではあったけれど、流れはそこまで動かなかった。

私を抱きしめる腕は変わらずそのままで、夏弥さんは嬉しそうに私を見つめた。

出会ってから今まで、何度も見せてくれた笑顔だけど、今目の前のそれはとても力強い笑顔で、何も迷いがない。

何かがふっきれたような安心感すら感じる。

「…夏弥さん?」

思わずそう聞くと、くすりと返された。

「なつや。さっきは呼び捨てで呼んでくれたのに。またキスしようか?」

「あ、あの、それは……」

「……」

「……なつや……」

「よし」

私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれて、子供みたいに笑う夏弥さんは、私に掠めるだけのキスを落として

「下の玄関で、『梓』を見たんだろ?それでも逃げ帰らずにこの部屋で待ってるくらいに俺の事が好きになったんだな。……かわいいな、花緒。とことん、愛しいよ」

心底幸せそうな顔で、思いがけない言葉を呟いた。

……そんな言葉は、予想してなかった。

思わず固まった私の体をぎゅっと抱きしめて、夏弥さんはほっとしたように大きく息を吐いた。

「愛してるよ、花緒」

……混乱、混乱、混乱。一体、これはどういう展開なんだろう。

私は夏弥さんの胸の中で、喜怒哀楽のどの感情を出せばいいのかと、そんな事を考えていた。