週末の薬指

「顔、小さかったな……」

ぽつりとそう呟くと、さらに気持ちは落ち込んで、もともとなかった自信さえ、さらに小さくなっていくどころかマイナス地帯へ突入していく。

顔が小さくて、とことん綺麗だからモデルになったのか、それともモデルだから顔も小さくなってきれいになったのか。

どっちなんだろう。やっぱりもともと綺麗だったんだろうな。

うーん、と小さく唸りながら、ソファに転がった。

意味もないことを延々考えながら、少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じる。

自分の心臓の音を聞きつつ、ただ気持ちを落ち着けるようにたわいもない事を考えると、次第に落ち込みから浮上していく。そんな自分に気づいたのは、悠介と別れた後で気持ちが壊れて入院した時。

心をケアをしてくれる病院に入院して、疲れ果てていた体も同時に回復させるため、あの頃の私の日常はストップしていた。

その入院生活の中で、自分なりに頑張って見つけたのが、自分の心臓の音を聞く事だった。

とくとくという音は、私自身を生きている実感で溢れさせてくれて、少しずつ気持ちを前向きにしてくれる。

それ以来、落ち込む事があったり不安に潰れそうになったときには、即心臓の音を感じるようにしている。

そして、つまらないと思える事を意味なく考える事も有効。私なりの回復の仕方。

今も、夏弥さんの向こう側に梓さんという女性の存在を感じて、落ち込みそうになる私の気持ちを鼓舞するように、体を小さく丸めてとくとくという規則音を感じていた。

ソファに転がって目に入った時計は、夏弥さんが帰ると連絡をくれた時刻を少し過ぎていた。

一時間くらい、こうしてぼんやりとしてたんだな。

小さく息を吐いて、夏弥さんの事を思い浮かべていると、ほんの少し目の奥が熱くなってくる。

きっと、梓さんが夏弥さんを捕まえるよね。

夏弥さんに早く帰ってきて欲しいけれど、そうなると、一階のエントランスで待ち伏せしてるらしい梓さんに捕まるのは確実。