週末の薬指

胸元から足にまでたくさん残されている赤い花の数を見る限り、瀬尾さんが何度も私を抱いてくれたんだとわかるけど。

久しぶりに交わした密な時間は、私の体に満足と疲労の両方を与えてくれた。

「満足だって……」

自分が考えたことに、自分で照れて、思わず手元の布団で顔を隠した。

照れたせいか、また体は熱くなって心臓の動きも倍速。

いい大人なのに、まるで成人前の女の子のような感情に包まれて、さらに恥ずかしい。

ひとしきり大きく息をして、気持ちが落ち着いたかなと思う頃、寝室のドアが開く音がした。

「あ、起きてた?なんだ、もう一回襲うつもりで来たのに」

「は?あ……おはよう……ございます」

とっくに起きていたらしい瀬尾さんは、紺色のスーツを着てさわやかに微笑んだ。

ゆっくりと近づいてくると、ベッドの端に軽く腰かけ、私の体をぐっと引き寄せた。

ほとんど瀬尾さんの膝の上に乗っている格好になった私の焦る顔を見ながら、もう一度『おはよう』とつぶやいて。

もう何度目かなんてわからないキスをしてくれた。

「あ、あの……起きたの早かったんですね……」

すぐ近くにある瀬尾さんの顔に照れてしまう。何を言っていいのかもよくわからない。

男の人と一晩過ごした朝って、どうすれば良かったっけ……。

この部屋に来るまでは意外に落ち着いていたけれど、実際に夜が明けてしまうとあたふたしてしまう。

「ああ、俺の腕の中で眠ってる花緒をずっと見ていたかったんだけどな」